モンゴル,ハンガイ地塊南縁,付加変成帯とオフィオライトの造構プロセス
ハンガイ地塊南方には,Baidrag地塊があり,間にオフィオライトを含む地帯がある.今回,それぞれの地帯の起源や変形様式,構造関係を明らかにできた.
Burd Gol schistは恐らく付加体起源であるが,さらに火山弧での中圧型変成作用を被った地帯で,この変成作用時に北西-南東の現在の構造方向と時計回りに斜交した向きのシース褶曲などの構造変形を被っている.Burd Gol schistは化石を含む非変成の石炭系島弧性堆積物にスラストしている.島弧性堆積物と変成したDelb Khairkhan付加体(南付加体と呼ぶ)との境界のみ,スラストでなく,デタッチメント断層で,モンゴルでは最初に発見されたデタッチメント断層である.南付加体でも,D1とD2の劈開の走向が大きく異なっている.D1リニエーションがD2褶曲で曲げられる例があった.オフィオライトと上下の付加体との境界はガウジや石英脈を伴うD2スラストである.枕状溶岩を覆う堆積物や蛇紋岩メランジェは観察できなかった.Haluut Bulg付加体(北付加体と呼ぶ)も変成しているが,赤色放散虫チャートや半遠洋性堆積物などのブロックを含む典型的な付加体である.この付加体から,D1とD2劈開の走向は同じになる.緑色片岩からなるDzag schistとの境界には断層は観察されず,両者は同じ付加体構成物である.Dzag schistは赤色チャート様の多色頁岩を伴うHangai表層堆積物にスラストしている.
スラストやデタッチメント断層を含むD2はHangai地塊の南西のBaidrag地塊への衝突を反映している.D1は衝突に先立つ付加時の変形である.オフィオライトより南西の付加体のD1がD2と大きく斜交するのは,中央海嶺を表わすオフィオライトを挟んで,Baidrag地塊に対する南付加体を成した海洋プレートの運動と,北付加体+Hangai地塊の運動(=衝突時の運動)が異なっているからである.北付加体では海洋プレートの運動とHangai地塊の運動は,両者は同じプレートなので,一致している.
デタッチメント断層により,変成した南付加体がエクスヒュームした.
文献:Buchan et al. (2001) Journal of Geological Society, London, 158, 445-460.
北東へのスラストを初めて指摘するなど信頼性の高い文献であるが,変形時階を区分していないなど,今回の調査結果からは修正すべき点が多い.文献として地質調査所報告などもあります.

モンゴル地質図.南に凸な帯状配列が特徴.南に成長したと考えられていたが,今回の調査地域では北に成長している.中央左部がハンガイ山脈,その南の列がアルタイ山脈.

ルン集落での最初の露頭.砂岩泥岩互層であるが,泥岩は緑色の酸性凝灰岩で,ハンガイ地塊を覆う火山弧起源の堆積物.ウランバートルでは黒色泥岩もあった.D2褶曲の逆転部.D1はスレート劈開.
6月5日朝のキャンプ場.花崗岩類はいたるところに広く分布する.岩山に住んでる鳥の声がうるさかった.アルバイヘールで水を仕入れた.タンクが一杯になるのに15分くらいかかった.
バヤンホンゴルのDzag schistの岩山から. ハンガイの表層堆積物との境界が見える.
これから調査する山の遠望.ただし,ほんの東端.

北付加体(Haluut Bulag melange)の縞状石灰岩. 緑色に変質し,気泡を伴う海山玄武岩を覆う.石灰岩のD2褶曲とスラスト.

黒色玄武岩もあり,岩脈に見える. 石灰岩基底,玄武岩との境界には有機質泥岩がある.全体は北西-南東軸のD2背斜を成す.
変成石灰岩に認められる,D2軸面劈開を伴う北西フェルゲンツのD2非対称褶曲.D2で曲げられるフォリエーションがD1劈開.
南付加体(Delb Khairkhan melange)黒色片岩のD2軸面劈開とD2褶曲. D1褶曲で,D1軸面劈開は層理面に平行なフォリエーションで,D2と90度近く異なる.

D2キンク.オフィオライト玄武岩に入ったが,Uldzit川を渡れず,さらに調査することはできなかった.砂金鉱山のゲルにも2泊した.ここで,Majigaさんの友人に肉をもらったり,2泊目は温水シャワーを提供して頂いたりした.
石炭紀とされる腕足類やサンゴ化石を含む塊状石灰岩と上位の成層石灰岩.上下の変成岩と対照的.石灰質泥岩にはD2相当の劈開が認められ,南西上位.より下位層は火成岩や石灰岩円礫からなる赤色礫岩と砂岩である.

南付加体とのデタッチメント断層.クローズアップは後述.南付加体は無化石石灰岩ブロックを含む砂岩.川岸のみ花が咲いている.

南付加体のgreenschistとblackschistのD2境界断層.尾根に露出があるが,これは地質構造とは無関係.北端の石灰岩を貫く粗粒玄武岩岩脈.玄武岩は南付加体,含化石島弧性堆積物,Burd Gol schistをアマルガメイトしている.

Burd Gol schistを急冷縁を伴って貫く粗粒玄武岩.砂質片岩のD1シース褶曲.北東フェルゲンツのD2褶曲の逆転翼部.他の地点で,blackschistでは,D1とD2劈開の走向が,南付加体と同じく,90度近く異なる.

正常翼,コアにも岩脈がある.全景.ここでキャンプしたが,目の前の露頭は島弧性堆積物とのD2スラスト露頭であった.

スラストのガウジ.小褶曲はスラストセンス.

上版の島弧性堆積物と下盤の南付加体とのデタッチメント断層.フォリエイティドガウジなどには正断層センスの剪断構造が認められる.緑色の岩石は玄武岩質凝灰岩,左手の明色部は含化石石灰岩礫を含む円礫岩,右手はメランジェの無化石石灰岩.

やく(Yak). Darvsin塩湖.

すべてgreenschistからなるDzag schistの北東フェルゲンツD2褶曲.北付加体砂岩泥岩の軸面劈開を伴なうD1褶曲.オフィオライト枕状溶岩.逆転は無い.


もう一つの鉱山の同級生.ガソリンをくれたが,夜通しボーリングしており,近くでキャンプしたのは不正解であった.島弧性堆積物の砂岩泥岩互層.行きに気付いた枕状溶岩と北付加体との境界露頭には行けなかった.同じ道を戻るのは難しい.Dzag schistと北付加体のBaidrag川での境界.やや崩れているが,断層は見えない.白岩体は付加体の石灰岩で基質はblackschist.Burd Gol schistのblackschistに認められる直交したD1とD2劈開.

北付加体.含放散虫化石赤色チャートを大量にサンプリングした.河原の転石のほうが化石は良く目立つ.他の岩塊は石灰岩や玄武岩 であるが,酸性凝灰岩を含む半遠洋性多色泥岩も認めた.しかし放散虫は見えない.

石灰岩とgreenschistの境界.これ以上は川を遡れない.この水鳥はキャンプしてると夜うるさい.

北付加体との境界付近のDzag schist.デタッチメント断層を予想したが,正断層など断層は見えない.

砂嵐で,避難しているところで,修理ではない.北東上位を示す枕状溶岩と北付加体は石英脈を伴う断層で接する.北付加体はここでは薄く,すぐDzag schistとなる.ダニが多く,帽子にびっしり付いて焦った.枯れたとげとげの草が好きらしい.
バヤンホンゴル北方にはハンガイ地塊の表層堆積物が広く分布する.泥岩は緑色で酸性凝灰岩質である.この岩質を反映して層理面が認定し難く,構造が分からない.厚さ10mの砂岩を挟んでいるのが分かる露頭を発見し,D2褶曲が分かった.垂直の割れ目が目立つが,ジョイントと思われる.川でスタックしたトラックを助けたが,その間に気付いた.さらに放散虫を含む赤色チャートの転石に気付いた.チャートと思って,川を渡ってみたら,酸性岩の岩脈で,それがスラストで切られている.気温は30度近いと思われるが,川には雪が残っており,深さは足首程度であったが,あまりの冷たさに遭難しかかった.モンゴルでは徒渉してはいけない.

Majiigaさんが変な岩山があるというので近寄るとチャートであった.しかし,上下は酸性凝灰岩でチャートとは異なる.砂岩との境界に断層も無い.これらは付加体とは考え難く,ウランバートル付近でのチャートも同様であろう.

Dzag schistとの境界をねらったが,遠望は似ていて,まずは外れ.でも明らかに境界が峠にある.スラストを発見.スラスト面の傾斜は35度である.

南西上がりのスラスト.不整合は無い.地質調査は終わり.

やぎ.後ろは運転手.温泉がある.バヤンホンゴルから結構遠く,10時ごろ着いて温泉シャワーを使えなかったが,泉源から温泉が流れているのを発見,暗闇にまぎれて露天風呂となった.

モンゴル人は一度通った道は決して引き返さず,温泉から峠越えした.しかし,峠手前でぬかるみがあり,越えられない.引き返すことは一切考えない.花崗岩を轍に投げ込んで通過した.お花畑であったが,蝶も少ない.

地形が地図と大きく違って,なかなか目的地に着かず,腹立てながら,小さい川でキャンプ.帰りはカラコルムに寄った.ところで写真のTsuamoは2年後の仙台への留学生候補です.勿論,年期が足りませんが,熱心でした.荷物の積みおろしなど日本人学生とは比べ物にならないくらい働きます.


長谷川君とミンジン先生.注:彼は例外的に働きます.くつろいでますが,非常に面倒で時間がかかる石を送る手続きもして頂きました.荷造りまでしてもらい,おかげさまで,腰を痛めましたが,ただで石を持って来れました.
ジャルガランさんを含めてみんなで英語論文にするつもりです.モンゴルの地質に興味の有る方(束田さんなど結構いるらしい),このホームページの段階でも引用頂ければ幸いです.